決算特別委員会(R3年10月質問・答弁)

障がい児保育に係る県の取組について

 

【私の質問】福岡県では、依然として保育所の待機児童が大きな課題となっています。

今年度の待機児童は昨年度1,189人と比べると、625人と大きく減少したものの、全国的に待機児童の多い都道府県の上位という状況は変わっていません。

待機児童の解消に向けて、各市町村で保育所の新設や増築などの対応を行っているにもかかわらず、なかなか解消しない要因のひとつとして、保育士不足が指摘されています。

保育現場では、新規保育士の確保が難しいだけではなく、せっかく保育所に就職しても、離職してしまう保育士が多いことも課題となっています。

 

県が昨年度行った保育士への調査において、保育士不足の理由として、「保育士の業務はたいへん」や「業務内容に給料が見合わない」といった意見が多かったとお聞きしています。

これは現場にいらっしゃる保育士さんからも同様の意見をいただいております。

 

そういった中で、保育現場の声として聞こえてくるのは、近年増加している、障がい児のお子さんに対する保育、いわゆる障がい児保育に対する保育士等の負担の大きさについてです。

 

問①「県内の障がい児保育児童数の推移等」

1 保育所等における障がい児保育児童数の推移(県全体)

○保育所等における障がい児保育児童数

※総務省「普通交付税算定に係る基礎調査」から(各年4月1日)

H30:1,625人 H31:1,828人 R2:2,148人 R3:2,306人 H30⇒R3 681人増加

[公立]

H30:443人 H31:412人 R2:470人 R3:459人 H30⇒R3 16人増加

[私立]

H30:1,182人 H31:1,416人 R2:1,678人 R3:1,847人 H30⇒R3 665増加

 

2障がい児受入保育所数の推移(県全体)

○保育所等における障がい児保育児童数

※総務省「普通交付税算定に係る基礎調査」から(各年4月1日)

H30:614箇所 H31:692箇所 R2:743箇所 R3:-

[公立]

H30:94箇所 H31:101箇所 R2:101箇所 R3:-

[私立]

H30:520箇所 H31:591箇所 R2:642箇所 R3:-

 

上記のように、平成30年度以降、障がい児保育の対象児童数は増加し、特に私立保育所において対応するケースが増えていることが分かります。

問②障がい児を保育所で受け入れる場合、通常の保育に必要な保育士の配置に加え、障がい児対応の保育士を配置することが一般的で、そのための人件費等については、国が財源措置を行っています。この財源措置は、平成14年度までは、補助金として交付されていましたが、国の三位一体改革により平成15年度から市町村に対する交付税措置となり、いわゆるひも付きの補助金から一般財源に切り替えられました。

当初は保育所に一定数の障がい児がいるとの前提のもと、具体的に受け入れた障がい児の数ではなく、保育所の児童数全体をもとに、算定されていましたが、この算定方法が、平成30年度から改善され、実際、受け入れた障がい児の数に応じ、一人当たり1年で約150万円、月に換算すると12万5千円が措置されることになっています。

 

この障がい児保育に対応する人件費の財源が対応を行う私立保育園に適切に市町村より交付されるためには、市町村が私立保育所に対する補助制度を作り、適切な額の補助金えお交付できるシステム作りが必要だと考えます。

しかし、先ほども述べたように、保育現場かたは障がい児保育の対象児童が増加する中、対応する保育士や保育所の負担が大きいとの声が出ています。

私は、そもそも各市町村が行っている補助に不十分な点があり、現場のニーズに応えられていない部分があるのではないかと危惧しています。

この点について、県としては、現状をどのように認識しているのか、お訊ねします。

 

答②(子育て支援課長)

今年度、県で全ての市町村に確認したところ、私立保育園で障がい児の受け入れを行っている市町村で、平成30年度の交付税額措置の改正を踏まえた補助の見直しを行った市町村や、見直しは行っていないが、以前から十分な補助を実施していると回答した市長町は、全体の半分程度でした。

普通交付税は、市町村でどう使うのかを判断することができる一般財源ではありますが、県としましては、障がい児の受け入れのために私立保育所側が配置した人件費等に見合った補助が必要と考えております。

今後、保育所における障がい児保育の対応に必要な経費や市町村の補助制度について実態を把握したうえで、財政的支援が十分とは言えない市町村に対して、補助制度の見直しや拡充について助言を行って参ります。

 

質③今の答弁を伺って、県も問題意識をお持ちだということは分かりました。私立保育所に対して市町村が行う、障がい児受入についての補助制度の現状をしっかり把握し、適切な補助が一日も早く行われるよう働きかけをお願いします。

とは言ったものの、課題は補助金だけではありません。

障がい児保育に対する保育所に対しては人件費などの補助だけではなく、専門的なスキルをもった人材確保への支援などにも急務だと考えます。

県は、これまで人材確保について、どのような取組を行ってきたのかお尋ねします。

 

答③(子育て支援課長)

県では、平成30年度から、障がいの特性を理解した上で、個々の発達の状態に合わせた保育を行うことができる人材育成のため、研修会を実施しております。

保育所でリーダー的な役割を担う保育士などを対象に、令和2年度までの3年間で、3,401人育成したところです。

 

問④県としても人材育成を行ってこられたということですが、実際に現場で障がい者保育に当たる保育士は、専門的知識だけではなく、子どもの特性に応じた対応力が求められます。

もともと人手不足が続いている保育現場で、こういった人材の確保が非常に難しいことは分かります。

今後も、障がい者保育の対象児童の増加が考えられる中で、その対応を、現場の保育所や保育士だけに押し付けておくわけにはいきません。

障がい児保育を現場で担う保育所や保育士に対し、補助金による予算措置だけでなく何らかの支援が行われているのか、現状を教えてください。

 

答④(子育て支援課長)

県が、市町村に対し、障がい児を受け入れている保育所へ市町村が行っている具体的な支援について確認したところ、専門家による巡回支援を実施している、と回答したのが25市町村、市町村の保育担当課の職員が定期的に保育所を訪問するなどの対応を行っている、と回答したのが5市町村、関係部署・機関との情報交換のみを行っている、と回答したのが4市町村、個々の保育所の対応に任せている、と回答したのが26市町村、となっておりました。

 

専門家による巡回支援の具体的な内容は、障がい児を担当する保育士等に対し、保育を行う上での助言や指導、悩みに対する相談対応を行うものとなっております。

 

また、巡回を行うスタッフは、その市町村の実務経験豊富な保健師や保育士などの他、外部の専門的な資格を持つ臨床心理士、言語聴覚士など、市町村によって様々です。

 

問⑤今の説明で、26の市町村は、個々の保育所の対応に任せているという回答であり、これは具体的な支援は行っていない状況と言えます。これからも分かる通り、障がい児を受け入れている私立保育所では大きな負担を感じているのではないかと推測します。

また、保育所や保育士に対する支援を実施している市町村でも、今答弁があったように、その支援内容がばらばらで、多くの市町村が手探りでこれまで対応してきているのではないでしょうか。

県として、今後、現場の保育所や保育士のために、リーダーシップを発揮して、総合的に何らかの支援を行って行くべきだと考えますがいかがでしょうか。

 

答⑤(子育て支援課長)

障がい児保育につきましては、今までお答えしてきました通り、市町村の私立保育所に対する補助制度や支援内容が様々である中で、あらためて保育所側が必要とする支援内容について検証する必要があると考えております。

 

問⑥障がい児保育については、市町村が実施主体ではありますが、県が適切な助言・指導を行い、しっかりとした対策を行わなければ、保育の現場の負担はさらに増大し、保育士が精神的、体力的にも疲弊してしまい、離職するなど保育士不足の要因につながりかねません。現にたくさんの保育士さんよりわたし自身相談を受けて今回の質問に至ります。

広域行政を行う県が、障がい児保育についてしっかりとした取組を進めていただければ、保育現場にとってこれほど心強いことはないと思います。

そこで、部長に障がい児保育に係る県の取組についての決意をお伺いいたします。

 

問⑥(福祉労働部長)

保育園に通われております、何らかの障がいがある児童の方々が年々増加する中、保育現場で奮闘されております保育関係者の皆様には、心から敬意を表すところでございます。

とりわけ、子どもの特性を踏まえた個別に対応を求められている保育士の方々のご負担、こういったものは非常に大きいものがあるというふうに考えております。

 

県といたしましては、保育士の増員のための人件費に対する市町村からの財政的支援、またスキル向上のための専門家派遣等の支援のあり方につきまして、実際に対応している保育所に調査を行いまして、より詳細に実態を把握することが必要であると考えております。

その上で、先ほど課長が申し上げました福岡県待機児童等対策協議会の中で設置する専門部会におきまして、効果的な支援策を研究し、市町村に対し、しっかり働きかけを行って参ります。

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