質問内容:新成長産業の振興とIT人材育成について
[質問]
私は、これまでに、予算特別委員会、代表質問などの機会を通じ、新薬の開発などの「先端バイオ」や「宇宙ビジネス」といった「新成長産業」の振興について、その必要性を訴えてまいりました。福岡県の「新成長産業」と言えば、「先端バイオ」「宇宙」「ブロックチェーン」です。
服部知事は、日頃より、「こうした厳しい時期だからこそ、将来の成長の種を蒔き、育てていくことが必要」と発言されていますが、私も同感であります。地域の未来を支える一助となる「新成長産業」の育成に、今こそ力を入れるべきであると考えます。
「新成長産業」が活発な地域であることは、ベンチャーキャピタルや金融機関の誘致・集積にも繋がることでしょう。
今回は、新成長産業の中でも、世界のIT業界が注目する先端技術「ブロックチェーン」の振興について、お伺いしたいと思います。
「ブロックチェーン」は、一般的には、ビットコインなど暗号資産を支える技術として知られていますが、IT業界では、これからのデジタル社会を支える基盤技術として注目されています。
「ブロックチェーン」は、銀行の基幹システムに代表される「中央集権型」とは異なり、「分散型」でデータを共有します。
万一、システムダウンしても復旧が容易で、セキュリティやトレーサビリティに優れたシステムを低コストで実現できることから、「インターネット依頼の発明」とも言われているところです。
私の知人が運営する、ITベンチャー㈱グッドラックスリーの井上代表の存在もあり、「ブロックチェーン」には以前から注目しておりました。
福岡県には、ブロックチェーン分野で全国的に有名な九州工業大学情報工学部や近畿大学産業理工学部があり、優れた技術で注目されるベンチャーも多いという強みがあります。
こうした中、県では、昨年度から本格的に「ブロックチェーン」技術の振興策をスタートさせました。さらに、今年度からは、ブロックチェーンベンチャーを対象にした、新製品開発補助も全国に先駆けて実施しているところです。
先日、開催を楽しみにしていた、県主催の「ブロックチェーンフォーラム」に、参加させて頂きました。当日は、我が国を代表するクリエイター集団「ライゾマティクス」の真鍋大度さん、ミスビットコインの藤本真衣さん、飯塚市のブロックチェーンのプレイヤーが揃ったこともあり、ITエンジニアを中心に、500名を超える参加者で賑わいました。
フォーラム冒頭では、服部知事、片峯飯塚市長、麻生泰飯塚商工会議所会頭が登壇し、ブロックチェーン推進について話され会場は大いに盛り上がり、この分野への期待の大きさを実感したところです。翌日には、ヤフーニュースにも取り上げられ、IT業界でも話題を呼んでいました。
このフォーラムは、著名人によるトークセッションが注目を集めましたが、私が興味深かったのは、筑豊にキャンパスを持つ、九州工業大学と近畿大学の学生による、ブロックチェーンを活用したビジネスプランの発表です。
聞けば、この学生たちは、県のブロックチェーンフォーラムに先立ち、5か月間のワークショップを重ねて、発表したとのことでした。ワークショップだけでは時間が足りず、地元IT企業の支援を得て自主合宿まで開催し、本番に挑んだとのことであり、そのビジネスプランのレベルの高さに、正直驚きました。
それだけに、私としては、「さらに時間をかけて大学生たちに学んでもらい、アプリが完成するまでの伴走支援をすれば、世界中が驚くようなアプリが生まれるのではないか」「フォーラムで発表するだけで、この取組を終えるのはあまりにももったいない」と思いを強く持ったところです。
そこで、知事にお尋ねします。私は、将来のITエンジニアを数多く輩出している九工大をはじめとする県内大学や高専の学生を対象に、ブロックチェーンの基盤を学んでもらう取組は、産業政策上も大きな意義があると考えます。
今後、こうした取組を拡充し、将来のブロックチェーン人材の育成に力を入れる考えはあるのか、お伺いいたします。
昨年度から、小学校でのプログラミング教育が始まり、来年度からは高校でも本格的に導入されます。
しかしながら、学校現場にプログラミングの知識持った先生が多いはずもなく、「どのように教えれば良いのか分からない…」と戸惑う声が多いようです。
こうした中、今月1日に、本県のデジタルコンテンツ企業「しくみデザイン」が県の支援を受けて開発したプログラミング教育アプリ「スプリンギン」が事業化開発したため、服部知事と吉田教育長、自民党県議団・松本会長に表敬訪問し、事業化の報告を行いました。
この「スプリンギン」については、昨年10月、松本会長もご参加され、モデル授業を遠賀町の広渡小学校で開催しています。その後、「しくみデザイン」では、生徒や教師の声を反映し、県の支援も得てさらなる機能強化を行い、今回の事業化に繋げました。
福岡県の企業が開発したプログラミング教育アプリが学校現場の課題を解決し、将来のIT人材育成にも大いに貢献していくことができれば、これほど嬉しいことはありません。
当日の様子を紹介している県のホームページによれば、知事は「教育委員会とも力を合わせて、県内市町村に、プログラミング教育の重要性をさらに認識していただき、このような素晴らしいアプリが活用されるとうに取り組んでいただき、このような素晴らしいアプリが活用されるように取り組んでいきたい」と発言されています。
私は、今回のように知事部局と教育委員会が連携をとって、地域の発展のために取り組んで行くことが重要であり、他分野においても、こうした連携が、今後、益々重要になっていくと考えます。
「スプリンギン」は、プログラミングを行うことなく、小中学生を中心に、子ども達が楽しみながら、オリジナルゲームなどを創る過程で、「創造性」や「論理的思考」を身につけてもらおうというものですが、高校生くらいになれば、自らプログラミング言語を学んでみたいという学生も増えていくことと思います。
ただし、プログラミング言語といっても、世界中では200種類以上の言語が利用されていると言われています。
その中でも、県がITスタートアップのため、その振興に取り組んでいるプログラミング言語Rudyは、日本人エンジニア、まつもとひろゆき氏が生み出し、世界中で利用されている唯一の国産言語です。
そこで、知事にお尋ねします。私は、例えばRudyを活用した高校生向けのプログラミング講座を知事部局と教育委員会や他部局などと連携して実施してはどうかと考えますが、いかがでしょうか。
最後に、いま、社会のあらゆる分野へのデジタルトランスフォーメーション導入が求められています。
県でも早速、先月30日に九経連や九州大学などと連携し「九州DX推進コンソーシアム」を設立し、「中小企業のデジタル人材育成に取り組む」ことを打ち出しました。この動きは、大変すばらしいものですが、デジタル技術を利用する側だけでなく、開発する側、つまりIT
エンジニアの育成を忘れてはなりません。福岡県のデジタル化が進むとき、そのシステムを提供するのは、大手企業だけではなく本県のITベンチャーであってほしいと強く思います。今後、本格的なデジタル社会を迎え、ITスタートアップの起業や、ITエンジニアを志す子どもたちも益々増えていくことでしょう。
「新成長産業の振興を」と日頃より発言してくださっている服部知事の前向きな答弁を期待して、私からの一般質問を終わります。
[知事答弁]
ブロックチェーン人材の育成についてでございます
県内には、優れたブロックチェーン技術を持つITベンチャー企業が飯塚市を中心に集積をいたしております。一方で、各企業は人材確保に苦労しているという声を耳にいたしております。
こうした中、ITに興味のある大学生などを対象に、ブロックチェーン技術の基礎を学ぶワークショップを開催いたしました。その成果発表の一環として、先日開催いたしました「福岡県ブロックチェーンフォーラム」におきましては、学生証をデジタル化してスマートフォンに表示させるとともに、SNS機能を持たせるというアプリや地域で活躍をいたしますボランティアの住民が評価されることで、その団体の信頼度を担保するアプリ等のプランが示されまして、私も若者ならではの発送とそのレベルの高さに驚かされました。
今後、まずは大学やITベンチャー企業の皆様と十分な意見交換を行い、今年度の事業を検証いたしまし上で、今後取り組むべき本県ならではの人材育成対策について、検討を進めてまいります。
Rudyを活用した高校生など若者向けプログラミング講座の実施についてお尋ねがございました。Rudyは、習得が容易で生産性が高く、効率的でスピーディーな開発を行えるという特徴を持っております。このため、アイデアをいち早く形にして、世に出すことが求められます。ITスタートアップ企業を中心に、世界中で利用されているところでございます。
ITスタートアップ企業の成長にとりまして、人材確保は極めて重要でございます。本県には、800名を超える我が国有数のRudyはコミュニティが形成されていることもございまして、近年アパレルサイトの「ゾゾ」、あるいはフィンティックサービスの「マネーフィワード」等、Rudy企業による開発部門の開設が相次いでいます。
こうした半面、県内企業にとっては、ITエンジニアの獲得が課題となっております。
私は、知事に就任するにあたり、新たな挑戦のひとつとして、「福岡県の次代を担う人材育成」を掲げております。
子どもたちは、私たちの地域社会、我が国にとって「宝」でありまして、子どもたちが様々な挑戦ができる環境をつくっていくことが使命であると考えます。
今後、本格的なデジタル社会を迎えるにあたり、ITエンジニアや起業家を志す若者も増えていくことと思います。
このため、県教育委員会や地元IT企業などとも協議を行いまして、Rudyを活用したプログラミング学習から起業等に至りますまで、意欲のある高校生など若者の挑戦を後押しする方策について、検討すてまいりたいと考えております。